戦争の記憶をどう次世代につないでいくか、敗戦国では特にデリケートな問題になってしまいます。
日本の場合は、嫌でも夏になると戦争について考えさせられますが、ドイツの事情はどうなのでしょうか?
4月30日はヒトラーが自殺をした日なので、ドイツではこの時期に第二次世界大戦のテーマを取り上げるメディアが多いです。
Bereitschaft zur Erinnerungskultur geht zurück | tagesschau.de
戦後80年経ち、ドイツでは「そろそろ戦争のことについて教育しなくてもいいのではないか」という意見が多くなっているそうです。
さらに、ナチスドイツについてちゃんと知っている人も少なくなり、その意欲もなくなりつつある、とのことです。
アンケートの結果では、「ナチスの犯罪を教訓としていくべきだ」と回答した人は、42.8%。
一方で「そろそろその記憶と決別してもいいのではないか」と考えている人は38.1%。この項目に対して拒否反応を示したのは37.2%。
回答者の半数近くは、今後とも今のドイツとナチスドイツを関連付けて教訓とすべきと考えている。
今のドイツとナチスドイツを切り離して考えようと思っている人、それに反対する人が拮抗している。
ちょうど半々になっているんですね。
特に中年層とAfD支持者(ドイツのための選択肢の支持者)は、「現代ドイツとナチスは切りなすべき」と考え、「それよりももっと今起こっている問題に集中するべきだ」と考える傾向にある。
一方で、知識階級・若年層は、そういう考え方に対して拒否反応を示す傾向があるようです。
回答者の44.8%が「ドイツ人が今でもユダヤ人に対する犯罪の責任を負うのはどうかと思う」と回答。この項目に拒否反応を示したのは28.2%。
その他「どうしてナチスドイツの歴史に向き合わないといけないのか理解できない」「将来はナチスドイツに向き合わなくてもいいと思う」という意見もあったようです。
全体的に、中年層よりも、若年層の方がもっとナチスに関して勉強して、将来に生かしたい、と考えているとのこと。
さらに、約半数の回答者が、AfDはナチスと同様、社会的脅威だと考えており、57.7%の人がAfDを右翼過激派であると思っている。
44.4%の人が、ユダヤ人に連帯を示すべきだと考えており、23.3%がこれに反対。
「ドイツはイスラエルに対して特別な義務を負っていると思うか」という項目に対して28.5%の人が「そう思う」と回答、「そうは思わない」と回答したのは39.8%。
対象が、ユダヤ人か国家としてのイスラエルかで、結果が変わっちゃうんですね。
このアンケートは、2024年10月にドイツに永住権を持つ3000人を対象にしたアンケート結果だそうです。
回答者の平均年齢は52.6歳。
ドイツに永住権を持つ人の中には、別の歴史背景を持っている人たちも多いです。
例えば、他のヨーロッパの国々、トルコや中東から移住している人だって、永住権持っている人もいます。
彼らにとっては、ナチスドイツの歴史を学んだり、それに対する責任を負うという感覚が全く分からなくて当然かもしれません。
いずれにしても日本と同様、ロスジェネ世代は「歴史より今の状況をなんとかして欲しいんだが?」と思っているようですね。
それにしても、割と突っ込んだアンケートしましたよね。
第二次世界大戦について、現代ドイツでは「敗戦」という意識ではなく、「ナチスドイツからの解放」という感覚です。